日本発「Computational Action教育モデル」が世界で評価。AI・デジタル技術を社会実装できる次世代イノベーション人材の育成へ
株式会社IRODORI(東京都文京区、代表取締役:谷津孝啓)は、AI・デジタル技術を活用して地域課題を解決する次世代人材を育成する教育プログラム「Japan Wagamama Awards(ジャパン・ワガママ・アワード)」の研究成果を、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)が主催するMIT App Inventor Global Education Summit 2026で発表し、最優秀教育論文賞「Best Education Paper」を受賞しました。本研究では、家族や身近なひとりの困りごとや願いを起点に、アプリ開発から地域での実証までを伴走する教育モデルによって、主体性、自己効力感など6つの心理社会的指標が統計的に有意に向上することを実証しました。
AI・デジタル人材育成が進む一方、社会で実践する教育機会が不足
日本では現在、AI・デジタル技術を活用して新たな価値を創出し、社会課題を解決できる産業イノベーション人材の育成が重要な政策課題となっています。文部科学省は「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」を推進し、経済産業省もデジタル人材・イノベーション人材の育成を重点施策として位置付けるなど、学校教育におけるデジタル活用は大きく前進しています。
一方で、AIやプログラミングなどの知識や技術を学ぶ機会は増えているものの、それらを実際の社会課題の解決につなげる実践的な学びは十分とは言えません。テクノロジーを用いて現実社会へ働きかけるComputational Action(※2)の重要性が高まるなか、学習者が地域の人々と関わりながら課題を発見し、解決策を形にし、検証・改善まで経験できる教育環境の整備が求められています。
こうした課題は、若者自身の社会への意識にも表れています。日本財団が2026年に実施した18歳意識調査(※1)では、日本の17~19歳の68.0%が「国や社会に役立つことをしたい」と回答した一方、「自分の行動で国や社会を変えられると思う」と回答した割合は52.7%にとどまりました。社会へ貢献したいという意欲は高いものの、それを実際の行動へと結び付ける経験や環境が十分ではないことが課題となっています。
株式会社IRODORIが運営するJapan Wagamama Awardsは、この課題に対する実践モデルとして、10代が身近な「たったひとり」の困りごとや願いを起点に、テクノロジーを活用して解決策を形にし、地域での検証・改善まで取り組む教育プログラムです。知識や技術の習得にとどまらず、実社会での挑戦を通じて主体性や自己効力感を育み、AI・デジタル技術を社会で活用できる次世代人材の育成を目指し、2023年から全国で取り組みを展開しています。
※1 出典:日本財団「18歳意識調査 第78回ー国や社会に対する意識(6カ国調査)ー」(2026年)
※2 Computational Action(コンピューテーショナル・アクション)とは、コンピューターサイエンスの知識や技術を活用し、身近な課題や社会問題の解決に向けて、実際に行動を起こすことを指します。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らによって提唱された概念です。
「声になっていない願い」を社会実装へつなげる、次世代イノベーション人材育成モデル

Japan Wagamama Awardsは、アプリの完成度や技術力を競うコンテストではありません。本アワードが掲げる「ワガママ」とは、利己的な欲求ではなく、まだ社会に認識されていない課題の兆しを「声になっていない願い(Unspoken Wish)」として捉え直す考え方です。
参加者は、自分自身の身近な「たったひとり」の困りごとや願いを起点に、当事者との対話を重ねながら課題の背景や本質を探究します。そのうえで、テクノロジーを活用した解決策をアプリのプロトタイプとして形にし、地域の利用者や自治体、企業などとともに検証と改善を重ね、実社会での実践へと発展させていきます。
知識や技術を学ぶだけで終わらせず、社会に働きかける行動へとつなげるComputational Actionを実践する人材を育成することを目的としています。
Japan Wagamama Awards 公式サイト:https://awards.wagamamalab.jp/
▍伴走と実践の循環で、10代の挑戦を育むエコシステム

本アワードでは、10代の挑戦を、相互につながる3つの支援フェーズを通じて支えています。これらは一方向に進む段階ではなく、試作や実証を重ねながら何度も行き来し、挑戦を育てていく循環型のプロセスです。
▶ 広範な裾野づくりー地域や環境にかかわらず、挑戦の入口を広げる
住んでいる地域や学習環境にかかわらず、より多くの10代が挑戦の機会を得られるよう、自治体や地域団体と連携し、全国各地で無料体験会を実施します。参加者は、自分自身や身近な人の困りごとや願いに気づき、それをテクノロジーで形にする最初の一歩を経験し小さな試作や実践を通じて成功体験を積みます。
▶ 選抜型の集中的伴走ー願いを社会課題として捉え、解決策を形にする
講義と伴走支援を通じて、その願いを社会課題として整理し、解決策をアプリのプロトタイプとして形にし発表を行います。
▶ 実社会での実装支援ー地域で検証し、改善を重ねながら社会実装へつなげる
全国大会の終了後も、地域の利用者や自治体、企業などと連携した実証や改善、国内外の学生団体との交流などを支援します。実社会から得られた反応や気づきをプロトタイプの改善や課題の捉え直しに生かし、継続的な実践と社会実装へつなげます。
この一連のプロセスの中核を担うのが「伴走者(Bansosha)」です。伴走者は、答えや技術を一方的に教える指導者ではありません。参加者が「誰のために、この課題に取り組むのか」という、人の存在を常に意識し原点に立ち返れるよう問いを投げかけながら、自ら考え、試行錯誤し、挑戦を続けられるよう支援します。
研究結果:主体性など6つの力が有意に向上。挑戦の継続を支える「伴走」の効果

プログラム開始時と最初のアプリ提出時を比較した結果、参加者の主体性や社会とのつながり、自己効力感など、テクノロジーを実社会での行動につなげるために必要な力(主体性、社会とのつながり、自己効力感、レジリエンス、他者志向性、仲間への信頼)の全6指標に有意な向上が確認されました。また、定性的な分析からは、技術や機会を提供するだけでなく、問いかけや励ましを通じて挑戦を支える伴走者の存在が、参加者の意欲と主体性を持続させるうえで重要であることが示されました。
【評価結果の裏付けデータ】
- 定量的な変化:参加者(n=77)を対象とした調査において、プログラム開始時から最初のアプリ提出時にかけて、「主体性(Agency)」や「社会とのつながり(Social Connection)」のスコアが統計的に有意に上昇しました(p < .001)。
- 定性的な変化(参加者の声):「他人の視点から考えるようになった」という声が多く寄せられたほか、「伴走者がいなければ途中で諦めていた」と語る参加者も複数おり、伴走者(Bansosha)が主体性を維持する基盤として機能したことが確認されています。
全3部門のうち2部門を日本チームが受賞。国際的なサミットで高校生が社会への実装を発表
MIT App Inventor Global Education Summit 2026内のGlobal Appathon Showcaseにおいて、Japan Wagamama Awards 2026のグランプリを獲得した高校生2組が、それぞれ部門賞を受賞しました。
| 受賞部門 | 受賞内容 | 受賞者 |
| Design Excellence Award | 離れて暮らす家族の孤食を減らすアプリ「Kokyo」 | 関西創価高等学校2年 幸地かれんさん(大阪府交野市) |
| Community Impact Award | 外出時のバリアフリー情報を可視化するアプリ「My Stick」 | 石川県立羽咋高等学校2年 チーム名:はくいっこ隊 田村凛音、狩野杏奈、北野志帆、雲井あられ(石川県志賀町) |
Design Excellence Award受賞:離れて暮らす人が一緒に食卓を囲む体験をつくる「Kokyo」


幸地かれんさんが開発した「Kokyo」は、高校進学を機に家族と離れて暮らすことになり、沖縄で一人暮らしをする母親の「望まない孤食」を減らしたいという思いから生まれました。物理的に離れていても、家族や大切な人と食事の時間を共有できるようにするアプリです。オンラインで食卓を囲む機能に加え、会話のきっかけや食に関するアドバイスなどを提供します。
審査員による評価(要旨)
「離れて暮らす人たちが、共に食事をする大切な体験を持てるようにするアプリです。UIやアイコン、画像表現、サウンドエフェクトの使い方が、他の発表の中でも際立っていました」
Community Impact Award受賞:地域のバリアフリー情報を可視化。市内店舗の行動変化まで引き出した「MyStick」


石川県立羽咋高等学校の4人で構成されるはくいっこ隊が開発したアプリ「MyStick」は、疾病により飲食店へ行く前に、入口の段差やスロープの有無を毎回電話で確認する叔父の困り事から始まりました。生徒たちは、外出への不安を減らすため、地域の飲食店を一軒ずつ訪問。入口の段差や店舗内の状況を調査し、外出前に必要な情報を確認できるアプリを開発しました。調査を続けるなかで、生徒たちが伝えたアクセシビリティ上の課題を受け、店舗側が実際に改善へ動き始める事例や共に計測を行った高校生の意識・行動変化が生まれました。
審査員による評価(要旨)
「アクセシビリティ上の課題を記録する過程が、飲食店側の改善を促すきっかけにもなりました。地域の課題に光を当て、事業者が改善へ投資する動機を生み出した点に感銘を受けました。すでに地域社会に具体的な変化を生み出していたプロジェクトです」
学校・地域の探究を国際発表へ。挑戦の段階に応じた2つの国際発表機会を構築
今後、Japan Wagamama Awardsは、中学校・高等学校の探究学習で生まれた生徒の取り組みを、地域での実証から国際的な発表へとつなげる教育モデルとして、全国の自治体や学校への展開を強化します。
MIT App Inventor Global Education SummitにおけるFinal Showcaseへの出場を目指すには、アプリの開発支援だけでなく、利用者への調査、地域実証、英語によるプレゼンテーション、渡航に向けた準備など、長期的かつ専門的な伴走が必要です。
このため今後は、(株)IRODORIの教育・伴走プログラムを導入する学校の生徒、または自治体や地域企業などによる支援体制が整った地域の生徒を対象に、Final Showcaseへの挑戦を支援していく方針です。一方で、家庭や学校、居住地域の環境にかかわらず、より多くの生徒が国際的な場で自らの探究成果を発信する機会をつくることも、Japan Wagamama Awardsの重要な役割です。
個人で参加する生徒についても、優れた取り組みをMIT App Inventor Global Education Summit内のポスターセッションなどで発表できるよう、App Inventor Foundationと連携し、新たな国際発表の仕組みを構築していきます。
これにより、学校や地域が一体となって社会実装と英語での発表に取り組む「Final Showcaseへの挑戦」と、個人の探究成果を世界へ届ける「ポスター発表への挑戦」という、取り組みの段階や支援環境に応じた二つの国際的な出口を整備します。
今後も、自治体、教育委員会、学校、企業、大学等との連携を広げ、中学校・高等学校における探究学習を校内発表で終わらせることなく、地域での実践、国内での成果発表、国際的な発信へと発展させる次世代イノベーション人材育成モデルを全国へ提供していきます。
▼専用HPはこちら
https://awards.wagamamalab.jp/
▼Japan Wagamama Awards 2027 プレエントリー受付中
https://awards.wagamamalab.jp/2027-teaser