2026年8月5日(水)、石川県内の中学校・高等学校の先生方を対象に、「Computational Action(コンピューテーショナル・アクション)」をテーマとした研修を実施しました。
今回の研修は、石川県立羽咋高等学校の先生方とともに企画し、羽咋高校にて開催しました。
羽咋高校では、DXハイスクールの取り組みの一環として、株式会社IRODORIが展開する探究学習プログラム「ワガママLab」を導入し、MIT App Inventorを活用しながら、身近な人の困りごとを起点にアプリを開発し、実際に社会へ働きかける学びに取り組んでいます。
今回の研修では、こうした羽咋高校での実践を紹介するとともに、先生方自身にもComputational Actionを体験していただきました。
Computational Action(コンピューテーショナル・アクション)とは?
Computational Action(コンピューテーショナル・アクション)とは、マサチューセッツ工科大学のHal Abelson(ハル・アベルソン)教授らが提唱した教育の考え方です。
コンピューターの知識やプログラミングスキルを身につけるだけでなく、テクノロジーを使って、自分や家族、地域が抱える現実の課題を解決し、社会に変化を生み出すことを目指します。
身近な人の困りごとに気づき、実際に話を聞いたり、状況を調べたりしながら、テクノロジーを使って解決方法を考え、形にしていく。
プログラミングを「学ぶ」だけではなく、身につけた力を社会の中で「使い、行動する」ことを大切にする考え方です。

羽咋高校で取り組む探究授業
羽咋高校では、1年生の全生徒と、2年生のコース別で選択した生徒を対象に、「ワガママLab」の探究授業を実施しています。

特徴は、「調べて終わり」にするのではなく、つくったアプリを実際に使ってもらうことを目指していることです。
地域の人に話を聞いたり、実際に試してもらったりしながら改善を重ね、テクノロジーを使って社会に働きかけるところまでを探究のプロセスとして大切にしています。
今回の研修では、先生方にも、こうした羽咋高校の生徒たちが取り組んでいる学びの一部を実際に体験していただきました。
羽咋高校の生徒たちによる実践紹介
研修の前半では、羽咋高校の生徒チーム「はくいっこ隊」が、これまでの活動について紹介しました。
はくいっこ隊は、「Japan Wagamama Awards 2026」への参加をきっかけに、足の不自由なメンバーの叔父の、外食の困りごとからアプリ「My Stick」を開発しました。
アプリ上だけで解決策を考えるのではなく、羽咋市内の飲食店を実際に訪問し、入口の段差やスロープ、トイレなどについて調査。
地域の人たちと関わりながら、アプリをより実際に使えるものへと発展させていきました。
Japan Wagamama Awards 2026ではグランプリを受賞。
その後、アメリカで開催された「MIT App Inventor Global Education Summit 2026」に参加し、世界各国から集まった参加者に向けて自分たちのプロジェクトを発表しました。
そして、社会やコミュニティへのインパクトが評価され、「Community Impact Award(コミュニティ・インパクト・アワード)」を受賞しました。
研修では、こうした成果だけではなく、なぜこのテーマに取り組んだのか、活動を進める中でどのようなことを考えたのか、自分たちがどのように変わったのかについても先生方に紹介してもらいました。
また、今回の挑戦を通して生まれた将来の目標についても話してくれました。
「教育者になったとき、挑戦しようとする子どもたちを応援したい」
「日本と世界をつなぐ架け橋になりたい」
身近な困りごとから始まった活動が、地域での実践や世界への挑戦につながり、自分たち自身の将来について考えるきっかけにもなっています。


先生方もMIT App Inventorに挑戦
研修の後半では、先生方自身にもMIT App Inventorを使ったアプリ開発を体験していただきました。
まずは、ボタンを押すと設定した言葉を読み上げる簡単なアプリをつくりながら、MIT App Inventorの基本操作を学びました。
自分でつくったアプリから実際に音声が流れると、会場からは「おお」という声も。
MIT App Inventorでは、パズルのようにブロックを組み合わせながらプログラムをつくることができます。
プログラミングの経験がなくても、実際に動かしながらアプリ開発を体験することができます。


身近な人の困りごとからアプリを考える
基本操作を学んだ後は、自分の親や祖父母など、身近な人の困りごとからアプリを考えるワークを行いました。
まずは、
「誰が困っているのか」
「どんな場面で困っているのか」
「どんな働きかけがあれば、その人の行動が少し変わるのか」
といったことを考えていきます。
例えば、
- 薬を飲むことを忘れてしまう
- 運動した方がいいと思っていても、なかなか散歩に出かけない
といった身近な困りごとが出てきました。
そこから、それぞれのアイデアをMIT App Inventorを使ってスマートフォンアプリとして形にしていきました。
短い時間ではありましたが、身近な人の困りごとを見つけ、解決方法を考え、テクノロジーを使って実際につくってみるところまでを体験していただきました。

高校生が先生方をサポート
アプリを開発する時間には、はくいっこ隊の生徒たちも各グループに入り、先生方をサポートしました。
先生方から質問を受けると、一緒に画面を見ながら必要なブロックを探したり、操作方法を教えたりしていました。
普段は先生から生徒へ教えることが多い学校ですが、この日は生徒が先生方にアプリ開発を教える場面がたくさん生まれました。
これまで自分たちが試行錯誤しながら身につけてきた知識や技術を、今度は誰かに伝える。
MIT App Inventor Global Education Summit 2026でCommunity Impact Awardを受賞した生徒たちが、今度は先生方をサポートする側になっている姿が印象的でした。


デジタル・ソーシャルアントレプレナーを地域から育てる
今回の研修を通して、改めて考えたのが、デジタルを使って社会課題の解決に向けて行動できる人を、地域の中でどう育てていくかということです。
私たちは、Computational Actionを実践する学びが「デジタル・ソーシャルアントレプレナー」の育成につながっていると考えています。
単にプログラミングができる人ではなく、身近な人や地域の課題に気づき、自分の持っているデジタルの力を使って、解決に向けて実際に行動できる人です。
今回活動を紹介してくれた羽咋高校の生徒たちも、アプリをつくるだけではなく、実際に地域へ出て調査を行い、地域の人たちと関わりながらプロジェクトを発展させてきました。
その活動は、Japan Wagamama Awards 2026でのグランプリ受賞、MIT App Inventor Global Education Summit 2026でのCommunity Impact Awardの受賞へとつながりました。
そして今回の研修では、これまで学び、挑戦してきた生徒たちが、今度は先生方にアプリ開発を教える側へと変化しています。

挑戦する人と、支える人。その両方を地域に
一方で、こうした若者の挑戦を広げていくためには、その挑戦を支える人の存在も必要です。
IRODORIでは、米国App Inventor Foundationと連携し、Computational Actionを学び、若者の挑戦に伴走する国際認定資格「CCAF(Certified Computational Action Facilitator)」の人材育成にも取り組んでいます。
学校の先生やビジネスパーソンなど、さまざまな立場の人がComputational Actionについて学び、若者たちのプロジェクトに伴走しています。
デジタルを使って、身近な困りごとを起点に、実際にコミュニティを動かす行動を起こす人。
そして、その挑戦に伴走し、地域の人や資源をつなぎながら、実践まで一緒に動かしていく人。
その両方が地域に増えることで、新しい挑戦が生まれやすい環境をつくることができると考えています。
今回、石川県内の先生方とComputational Actionについて学び、実際に体験できたことも、そうした環境を地域につくっていく一歩になればと思います。
今後もIRODORIでは、デジタルを手段に社会に働きかける若者と、その挑戦を地域の中で実践へとつなげる人材を増やしていきます。
▼国際認定資格 CCAF(Certified Computational Action Facilitator)について
https://irodori-group.jp/projects/ccaf-2/
▼ワガママLab 探究学習テキストについて
https://hip-astronomy-a91.notion.site/STEAM-23f03c1a61508032b278c88ae26e5c85